コンビニ深夜営業自粛要請の是非
目先の目的しか頭にない馬鹿の論理極まれり、と思ったのが最初の印象。
で、それに続くコンビニ側の反論もちょっと的を射ていないなと。
まずは問題点を整理してみよう。
取り敢えずプレスリリースとして施策を明確に出しているところは無さそうなので、報道されたものから論点を抽出する。
朝日新聞の記事が京都市の論点を一番多く拾っているようなので、これを叩き台として考えてみよう。
京都市は地球温暖化対策の一環として、市内にあるコンビニエンスストアに深夜の閉店を求める方針を固めた。省エネで温室効果ガスの排出を減らすほか、消灯で夜の町並みの景観を改善する狙いもある。7月にも業界団体や有識者らによる「市民会議」をつくり、具体案をまとめ、来年度にも実施したい考えだ。合わせて自動販売機の台数規制も検討する。都市部での深夜閉店は珍しく、温暖化対策のモデルになることをめざす。
ここに上げられているように論点は二つ。
・温暖化対策として、省エネによる温室効果ガス排出削減
・消灯による町並みの景観改善。
で、コンビニ側の反論としてはロイターの記事が詳しいようなので、こちらを参照。
JFAは、午前7時から午後11時までの16時間に短縮した場合でも、冷蔵・冷凍庫は稼動し続けることや、物流が昼間に集中することで効率が落ちCO2排出量が増えることなどから、差し引き4%程度(日本全体の排出量の0.009%)の削減効果にとどまるとの試算を公表した。現在、約4万2000店で100万人、配送や弁当の製造を入れると130万人が働いており、営業時間を短縮した場合、大量の既存雇用者が失職することになると懸念している。
24時間営業を行うことのメリットとして、防犯・防災上の貢献もある。2007年度に女性のコンビニへの駆け込みは1万3000件以上あったほか、大規模な地震が発生した際にも、ライフラインとして緊急支援物資の提供などを行っているとし、必要性を強調した。
ここでとられている反論は三つ。
・温室効果ガス削減の効果は薄い。
・雇用機会の損失が大きい。
・深夜防犯の意義が大きい。
ライフラインとしての存在意義と深夜営業とは繋がりが見いだせなかったので割愛。
京都市は温室効果ガス削減目的だが、コンビニの試算ではその効果は薄い。
そして、京都市は考えてもいない経済への打撃としてコンビニが上げている雇用機会損失。
それぞれの言い分として京都市は景観保護、コンビニは深夜の防犯。
・温室効果ガス削減
個人的なスタンスとしては、そもそも温室効果ガス削減が温暖化対策として果たして有効かどうかに疑問。
ただし、政治的には温暖化対策として温室効果ガス削減目標を掲げているので、正しいかどうかは兎も角、それに従って論を進める。
コンビニが試算する削減量は4%程度だが、おそらく京都市としては削減されるのならばそれで良いというスタンスを取るだろう。
規制目的は削減そのものなので、却って温室効果ガスの排出量が増えるなら有効な反論として機能するが、削減されるのであればそれで良しと帰結するだろう。
ロイターの記事で触れている様に、異種業態への規制拡大も目論んでいるようなのでコンビニ単体での削減量が少ないのであれば他業態へ拡大するという口実に使われるのがオチだろう。
・経済効果
コンビニでは自前の事業に従事するものの効果のみを考えているが、現状深夜に動いている人間は多い。
深夜の営業を取りやめることは経済規模そのものの縮小を意味するので、規制区域全体の経済に食い込んでくる。
環境行政不況を招く可能性が高いと推察される。
税収の落ち込みも予想されるため、財源確保はどうするのかという課題も発生する。
・景観保護
消灯での景観改善は反論のしようが無い。
ただし、この場合は全ての業態に同様の規制をする事が重要。
一業態のみを狙い撃ちにするのでは不公平。
ここからはもう少し踏み込んで考えよう。
現在、規制は自治体レベルでの話。
深夜営業規制を始めた場合どのような事態が想定されるのだろう。
企業としては深夜に保守などの24時間運営を必ず求められる場合がある。
特にweb関連業務や全世界向けに営業活動をしていれば自ずとそうなる。
その企業は人材確保などの簡便さから規制の無い地域を営業拠点として選ぶことになる。
つまり規制地域からの人口流出が懸念される。
また、交通機関が便利であれば夜間の移動距離が伸びるだけで終わる可能性もある。
他業態にも規制が広がれば歓楽街などがある地域への移動が増えることになるだろう。
また、生活習慣そのもののタイムシフトをも視野に入れている様だが、現在電力消費量は夜間よりも昼間の方が大きい。
単純に考えるとタイムシフトした場合には夜間電力消費が落ち、昼間電力消費が増えると予想される。
その場合、発電量不足も懸念される事になる。
考えれば考えるほどメリットが薄く、デメリットが大きい様に思える。
おそらく環境保護原理主義の歴々にはこの論理も全く通じないのだろう。
しかし、環境保護するのにも原資は必要で、それは税収で賄われる。
つまり経済がある程度良い状態で、かつ経済への影響を最小限にする施策で無いと意味がない。
若しくは、規制ではなく温室効果ガス排出量に税金かければ良い。
抑制効果と対策規模に見合った税収が得られるだろうから一石二鳥。
特定業態を狙い撃ちにする事もない。
個人的に言えば、そんなに温室効果ガスが嫌なら電力は全て原子力で賄う様にすれば良いと思う。